血便のお話
肛門から出血する…という場合に真っ黒な便(黒色便またはタール便)が出る“下血”と真っ赤な新鮮血が排泄される“血便”があります。
下血は食道、胃、十二指腸や上部小腸から出血して腸を経由して真っ黒となり肛門から排泄される場合で、急激に大量の出血があると、吐血を伴うこともあります。
血便は主に下部小腸、大腸、肛門からの出血で、赤黒いものから真っ赤な血液までを肛門から排出します。
これらの消化管から徐々に出血しこれが持続する場合は、全身倦怠感、めまい、息切れなどの症状がでてきますし、急激に大量の出血があれば血圧低下、意識消失などのショック症状も出現します。ですから、排便後は、いつもと同じような黄色~こげ茶色の便が出ているかを確認することは大切なことです。
今回は、肛門から比較的赤い出血がみられる血便を生じる疾患をご紹介します。
1)痔核:排便後にペーパーに血がつくという程度から、便器が真っ赤に染まってびっくりしたという場合まで様々です。便秘のため、トイレで“うーん”と顔を真っ赤にして“いきんで”いませんか? それから、トイレに新聞、雑誌や携帯電話を持ってはいり、長いことこもっていませんか? これらは痔を悪化させます。
2)虚血性大腸炎:腸管を栄養する血管の循環障害に起因し、動脈硬化や便秘などが関与すると考えられています。動脈硬化というと高齢者の病気と思われるかもしれませんが、若年者でも発症します。出血のほか、下痢、腹痛なども生じます。
3)大腸癌:皆さんが最もおそれている病気でしょう。血便が必ず出現するわけではなく、お腹がはる、ガスが出にくい、便が出にくい、便柱が細くなったなどの症状が出た場合は要注意です。またこの疾患に関しては初期はほとんど無症状です。定期的な大腸内視鏡検査をお勧めします。
4)大腸ポリープ:時に出血をともないますが、比較的まれです。ほとんど症状はありません。
5)憩室症:腸管内に小さな袋状の部屋が認められ、ここから出血することがあります。大腸内視鏡を挿入して、クリップで止血し治療します。
6)感染性腸炎:食物、海外旅行、ペットなどから感染し、腹痛や下痢をともない、時に出血します。病原性をもった細菌など(テレビでも話題になったO-157も含まれます)が原因で、抗菌剤などで治療します。
7)薬剤性出血性腸炎:他の病気の治療を目的として投与された薬物(抗生物質や消炎鎮痛剤:痛み止めなど)が原因で、出血や下痢、時には腹痛を生じます。
8)炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎):原因不明の疾患で、腹痛、下痢、発熱などをともないます。
このほかにも肛門から血液を排出する疾患はありますが、早期の治療が病状を悪化させないためにも大切です。大便を体の外に排泄してしまえばもう関係ないといって“知らんぷり”をして水を流すのではなく、自分の出した便としばらくニラメッコをして、いつもと変わらない便が出ているか確認してください。それから、痔疾患を以前からお持ちの方、出血に慣れていらっしゃる方も多いと思いますが、久しぶりの痔出血と決めつける事をせずに、大腸内視鏡検査を受けましょう。内視鏡を肛門の奥に進めると、そこに大腸癌が潜んでいることがあります。それから最初にご紹介した真っ黒な便が出たときには、まず上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査を受けましょう。